ビビッドピンクの誘惑

注意:女体化百合

「買っちゃったな」
「ドキドキしましたぁ」
「誰かに見られたりしなかったかな」
「マ、マスクもしたし大丈夫……だと思います」
ベッドの上に並べたのは、なんでも揃うディスカウントストアでさっき買ってきたビビッドな色あいの大人のおもちゃたち。
宍戸さんと二人、マスクで変装したけれど真夜中の店内は意外と人が多くて、『成人向けコーナー』ののれんをくぐるときには何度も背後を確認した。忍者みたいに忍び込んで、コソコソとかごに詰めたのはピンクのローターと、ブルーのバイブレーター。宍戸さんが大きいのはいやだと言ったから細身のものを選んだ。
正座を突き合わせて、それぞれパッケージから出してみる。
私が手にしたのは生々しい形のバイブレーターで、思わずじっくり観察してしまった。本物を見たことはないけれど随分とへんてこな形をしている。卑猥なのかはよくわからなかった。
それよりも、宍戸さんが手にしている親指ほどの大きさのローターの方がよっぽどいやらしく見えた。
もちろん二人ともこういった道具を使ったことはない。けれど気持ちいいらしいということは知っていて、これを胎内に入れた宍戸さんが声を殺して悶える様子を想像するだけで、おなかの奥の方がキュンッとした。
妄想を膨らませている私をよそに、宍戸さんは手際よく黄色いビニール袋に空箱と包装をまとめて詰め込み、持ち手を結んでベッドの下に置いた。
「さて」
宍戸さんが思い切りよくダブダブのパーカーを脱いだ。お風呂上がりに買いに出たからキャミソール一枚きり。ノーブラだから胸の形もツンと立った尖りもはっきり見て取れる。
一緒に暮らし始めてもうすぐ一年だ。見慣れた無防備な姿とはいえ、これからしようとしていることを思うと落ち着かない気持ちになってしまう。
握っているバイブレーターの使い道を頭に描いて、ふと衛生面が気になった。
「これ……消毒とかした方がいいんでしょうか」
新品だけれど、そのまま使用するのはなんとなく気が進まない。
「どうなんだろ? わかんねぇ」
「一応洗ってきますね!」
「待て、私が洗ってくる」
「えっ」
「だって、私に入れるんだろ、これ」
私の手から奪い取った宍戸さんは、両手にそれぞれえっちなおもちゃを持って部屋を出て行ってしまった。
水の流れる音が聞こえてくる。
私はほんの数時間前のことを思い出していた。

一緒に晩ご飯を食べたあと、宍戸さんをお風呂に誘った。
明日は休日だし、買ったばかりの入浴剤を入れた湯舟に二人でゆっくり浸かっていちゃいちゃしたいなぁって、それだけだったのに、宍戸さんはお湯の中で私にぴったりくっついて「しよう?」って言った。
宍戸さんからのお誘いなんて久しぶりで、というかえっちなこと自体久しぶり過ぎて、嬉しいんだけれどどうして急にしようなんて言い出したんだろうって不思議になった。
「いいんですか? 宍戸さんがいいなら私はいつだって大歓迎ですけど……」
「うん……」
濡れた黒髪から雫が垂れた。
宍戸さんの耳に髪をかけてキスをしたら、ちらっと私を見て抱きついてくる。
私よりは小さいけれどやわらかいおっぱいが押しあてられて、途端にムラムラしてきた。だって宍戸さんからいい匂いがするし、しっとりした肌は触り心地いいし。
けれど宍戸さんの気持ちいいところに触れようと手を伸ばそうとしたとき、耳元でかしこまった声がして、私の手はお湯の中で不自然に漂った。
「あのさ、使ってみたいモンがあるんだけど」
「使う?」
「えっとさ、その」
「?」
「っ、お、おもちゃ」
「おも、ちゃ……?」
「い、一緒に買いに行かねぇ?!」
バスルームに、宍戸さんのひっくり返った声が反響した。

宍戸さんのパーカーを畳んで、着ているもこもこのカーディガンを脱いだ。
スカートとキャミソールも脱いで畳む。私の方はちゃんとブラジャーもしていた。上下揃った下着は宍戸さんと色違いで買ったもので、デートのときにしか身に着けないんだけれど今夜は特別。
宍戸さんがなぜ突然あんなことを言い出したのかはわからないけれど、夜の営みに関して積極的になってくれることは願ってもいないことだ。
ずっとベタベタくっついていたい私とは違って、宍戸さんは恋人になる前と変わらずサバサバしている。
おもちゃを使ってみたいなんて大胆なお誘いには驚いたけれど、私と深く触れ合いたいと思ってくれているとわかってすごくうれしかった。
「あっ」
そういえば、宍戸さんは「私に入れるんだろ」と言ってバイブレーターを持って行った。
入れちゃっていいの? 私の指しか入ったことのない大事なところに、あんな硬そうなもの。
でも「入れるんだろ」って決定事項のように言うってことは、入れて欲しいってことだよね? それって私じゃ満足できないってこと? いやいや、そんなことないはず。だって宍戸さんは私に触られて何回もイっちゃうし、気持ちいい、もっと、って私にいっぱいキスをして、ふにゃふにゃになった体でぎゅーって抱きついてくるもん。うん、大丈夫。おもちゃを使ってみたいって言ったのだって、きっとただの好奇心だ。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
帰ってきた宍戸さんは二つのおもちゃをシーツの上に並べてホットパンツを脱いだ。
キャミソールとショーツの姿でベッドに乗り上げて、私のブラジャーを人差し指でツンとつついた。
「この下着」
「えへへ、おそろいで買ったやつです。かわいいですか?」
「うん。よく似合ってる」
「今度一緒に着てデートしましょ」
宍戸さんのキャミソールをたくし上げて脱がせたら、宍戸さんは私の背中に腕を回してホックを外した。
えっちなことをしなくても、私たちはお互いの裸を見慣れているし触れ合うことも少なくない。
でも、快感を引き出すような触れ方は滅多にしないから、宍戸さんに初めて触れたときのように心臓が高鳴った。
たくさん、たくさんキスをしながら、宍戸さんのおっぱいを手のひらで包んで優しく揉んでみる。
ときどき乳首を指先でかすめると、宍戸さんはピクリと反応してため息を漏らした。
「私、宍戸さんのおっぱい、好きです」
「んっ、小さくて、悪かったな」
「何言ってるんですか。こんなにかわいいのに」
宍戸さんを押し倒して、ツンと硬くなった乳首を舌で撫でた。吸いついて、たっぷりと唾液を塗りつけて、舌先で転がして、ときどきそっと歯を立てる。
「んんっ、あっ」
宍戸さんの色っぽい声を聞くと、えっちな気持ちが加速する。鼻から抜ける大人びた声で私の名前を呼ばれたら、もっと気持ちよくなってほしくてたまらなくなった。
いっぱい吸いついた乳首は、もう片方と比べて随分紅くなってしまった。そっちも同じくらい気持ちよくしてあげたくて捏ねるようにして舐め続けたら、舌を這わせるたびに、宍戸さんは胸を突き出して可愛い声で鳴いてくれた。
「きもひいいれふか?」
「んっ、すごい、きもちい」
宍戸さんが内ももを擦らせてもじもじし始める。
乳首を甘噛みしながら、宍戸さんの大切なところに薄い布地を隔てて触れると指先に湿った感触がした。
「もう濡れてきちゃいましたね」
「っ、んっ」
「こっちも気持ちよくしてあげますね。宍戸さんはとっても敏感だから、優しく舐めてとろとろにしてあげないと」
眉根を寄せた切ない顔で私を見る宍戸さんの瞳は、快感への期待で満ちていやらしい。
私が宍戸さんのショーツを脱がしやすいようにお尻を浮かせてくれる仕草ですらも淫らに思えてくる。
恥じらいながら開かれた足の間に入ってそこに顔を近づけた。まだ触れていないのにとろけた蜜に濡れていて、小さく隆起したクリトリスが「食べて」と私を誘っていた。
舌を伸ばして、ふと目線を上げると、宍戸さんが口元を手で隠してこちらを見つめている。
熱のこもった視線が、性器を愛撫する様子を今か今かと待ちわびているみたいで、その期待に応えようと目線を交えたまま舌の先でそっと触れた。
「っふ」
宍戸さんはわずかに目を細めて甘い吐息を漏らした。
もう一度、今度は強めに弾いてみる。すると内ももをヒクヒク震わせて素直な反応を見せた。
陰核なんて言ったりするけれど、正に性感の核だなぁって宍戸さんが感じている様子を見ているとしみじみ思ってしまう。こんなに小さなところに触れるだけで、まるで別人になったみたいに宍戸さんは乱れて、あでやかに華開かせる。とても綺麗で、声も涙もまるごと全部、二人きりの部屋に飾っておきたいくらい。
唾液をまとわせるだけの微かな刺激と、舌を硬くして押しつぶすような刺激を不規則に繰り返す。ときどき下から全体を舐め上げて小さな勃起に吸い付いた。
わざとぴちゃぴちゃと音を立てて舐めしゃぶると、宍戸さんはどんどんあられもない喘ぎ声を上げるようになって腰をカクカク震わせ始める。
私が触れたせいで、宍戸さんがどんどん暴かれていってしまう。
もう、可愛くて可愛くて、どうにかなっちゃいそうだ。
喉の奥からひっきりなしに漏らす、慎ましいとは言い難い艶やかな声。
苦しそうに眉をしかめて、けれど快感でほっぺたを薄紅色に染め蕩けた表情。
触れたところを火照らせて、無抵抗に感じて震える肌。
そのどれもが、私が宍戸さんにもたらした愛欲の結果だと思うと、いとしくてたまらなくて、血液が沸騰して体中をめぐっているんじゃないかと思えるくらい、興奮する。
「だめ、だめぇ、あぁ、まって、んんっ」
力の入らない指先が私の髪を混ぜた。構わずに舌で蕾を強く転がすと、声にならない声がして、宍戸さんは身を捩らせて体をぐっと強張らせた。
宍戸さんの絶頂は静かに激しい。
達すれば達するほど声を発さなくなっていく。よがり声を上げられるよりそっちの方がよっぽど色っぽい。
切羽詰まった体を、クリトリスを舌で弾くたびにビクビク跳ねさせて、強すぎる刺激から体をのけ反らせて逃げようとする。
私の愛撫を余すことなく受け止めてほしくて、足の付け根を押さえ込んで追いうちをかけるように強く吸った。
「っ、っ! っっんっ!」
宍戸さんはひときわ大きく体を跳ねさせた。
一番気持ちいいところに昇りきってしまったみたいだ。
詰めた息を吐き出すまで唇で蕾を挟んだまま待って、宍戸さんが呼吸を取り戻したころゆっくり唇を離した。
開かれたままたの足の間をのぞくと、溢れた愛液がお尻を伝って垂れ流れている。
しとどに濡れた秘部は絶頂の深さを物語っていた。
うっすら紅く色づいた小さな隆起に愛しさと労りの気持ちを込めてちゅっと音を立ててキスをすると、宍戸さんの指先が私の頬に触れて皮膚を滑った。
「っあ、はぁっ、っ、は、だめって、言ったのに」
「宍戸さんが気持ちよさそうにしてるのに、止めるなんてできませんよ」
「なぁ、こっち、来て」
伸ばされた両腕にいざなわれて、宍戸さんを抱きしめる。
汗ばんだ熱い肌がぴったりくっついて、宍戸さんのえっちな姿を目の当たりにしている間に濡れ始めていたショーツの中がキュンと疼いた。
「せっかく買ってきたのに、使う前にイっちゃったじゃん」
「一回で終わりじゃもったいないじゃないですか。おもちゃも使ってみましょうよ」
「……うん」
伏し目がちにうなずいた宍戸さんにキスをして、放りっぱなしだったローターとバイブレーターを引き寄せた。
「どっちから使ってみます? 初めてだからローターからの方がいいですかね?」
「……じゃあそっちで」
「宍戸さん、恥ずかしいんですか?」
「だっていざ使ってみるとなったら、なんか……生々しいし……」
「私しか見てないから大丈夫ですよ?」
「うん……」
「もっとえっちな宍戸さんを見せてください」
「……うん」
唇を噛んで頬を染めた宍戸さんのおでこにキスをすると、こちらを見つめて唇にキスを返してくれた。
向かい合って寝転んで、ピンク色したローターを摘まみ上げてみる。繭玉のような形のそれから伸びたコードの先にスイッチがあって、オンオフと振動の強弱を調整できるようになっていた。
試しに弱い設定でオンにしてみる。抑揚のない低音が響いて、ピンクの繭玉は小刻みに震えた。
「わっ、こんな風に震えるんだ」
「っ」
子どもみたいにはしゃいでしまった私とは対称的に、宍戸さんは息を飲んでローターを見つめた。
「気持ちよさそうって思っちゃいました?」
「あっ」
宍戸さんのおっぱいの膨らみにそっと触れさせてみた。
円を描くように膨らみをなぞる私の手元を、宍戸さんは不安そうなまなざしでじっと見つめている。
「ブルブルしますか?」
「んっ、うん、震える」
少しずつ、中心の尖りに近づけていく。
「このまま、ここ、ツンってしてみたら気持ちいいのかな」
「っ、ふ」
「コレ、あててもいいですか?」
「や、あ」
「いや? いやならしません」
「や、やじゃない」
「そうですか? じゃあ、ちょっとだけ」
ツんと色づいて勃ったままの乳首の先に、震えるローターを触れさせた。
「あぁっ」
宍戸さんが肩を揺らす。
離れた乳首を追いかけてローターを押し付けた。
「あっ、うぅん」
「気持ちいいんだ?」
「うん、きもちいい」
「どんなかんじですか?」
「なんか、んっ、すごく、震える」
「震えると気持ちいいんですか?」
「んっ」
「そっかぁ」
宍戸さんは私の背に腕を回して肩を揺らしている。
薄く涙の張った瞳で物欲しそうに私を見つめて、唇を開いた。
キスしたいんだってわかったけれど、私の指が勝手にメモリを『強』にしてしまったせいで、宍戸さんは表情を快感に歪めた。
「あぁっ、なに、やんっ、あっ」
「強いほうが気持ちいですか?」
「あっ、いきなり、強く、すんなぁっ」
「おっぱいでこんなに気持ちいいなんて」
ローターを肌に触れさせたまま宍戸さんの体を下る。
ゆっくりゆっくり、みぞおちからへそをなぞって、おなかから腰骨、そして繁みに到達した。
「ここにあてたら、どうなっちゃうんでしょうね?」
「あ、あ」
強い振動が恥骨を震えさせると、宍戸さんは小さく腰をくねらせた。
期待されていることに気付かないふりをして、足の付け根を回ってぴったり閉じたままの太ももをなぞる。
じっくり焦らして内ももを行き来していると、泣きそうな顔をした宍戸さんに唇を奪われた。
「今日のおまえ、なんか、いじわる」
「やだ、ごめんなさい。泣かないで」
「泣いてねぇよ」
「いじめるつもりはなかったんです」
「ん。でも、いじわる」
あったかい舌に口の中を舐められた。その舌を掴まえたくて追いかけていたら、宍戸さんはショーツの上から私の秘部を指で押した。
「おまえだって濡れてるくせに」
「あっ、だめ、私はまだいいんです!」
布地をずらして直に触れようとしてくる宍戸さんの手を振り払って、ローターを閉じられた足の隙間から性器に押し付けた。
突然、敏感なところに強い刺激を与えられた宍戸さんは驚いて腰を引く。
わずかに開いた足の間に太ももを割り入らせて、手探りで見つけたクリトリスにローターをあてた。
「やぁぁっ、まっ、ちょた、そこ、やだぁ」
ついさっき達したばかりの蕾が強い刺激に弱いことはよく知っている。
けれど、つらいくらいの快感に翻弄された宍戸さんを見たくなったから、いやと言われても手をどけるつもりはなかった。
「あぁ、んっ、っ、つよい、だめ、っ」
「すごい。宍戸さん、ガクガクしてる」
「っ、ん~っ、だめ、もう、あん、イっ、きそ、~っ」
「えっ、もう?」
「あっ、ほんとに、だめ、あっ、あん、っく、イ……、あぁっ、っ、っ!」
宍戸さんは私に縋りつきながら大きく腰を跳ねさせて達した。
舐められてイっちゃったときよりも苦しそうに眉根を寄せている。
「も、やだ、っ、」
震える手が私の手首を掴む。そして宍戸さんはローターを遠ざけようと必死に腕を伸ばした。
「大丈夫ですか?」
ローターを止めて、宍戸さんを抱きしめた。もう性器には触れていないのに達し続けているのか、喉の奥で嬌声を押し殺しながら、止まない絶頂に体を支配されて震えている。
「ごめんなさい。こんなになっちゃうなんて、思わなくて」
「んっ、ちょた」
「宍戸さん?」
「もっと、ぎゅって、して」
消え入りそうな声でお願いされて、胸が甘く締め付けられた。
怖いくらいに愛らしくて、守ってあげたい気持ちがぶわっと込み上げる。
苦しくさせないようにぎゅうっと抱きしめたら、宍戸さんは熱い手のひらで私の背中を撫でた。
「ちょっと、びっくりした」
荒い呼吸を繰り返す宍戸さんの吐息が熱い。
「けど、気持ちよかった、かも」
私の胸に顔をうずめて、宍戸さんは呟いた。
「そんなに気持ちよかったなんて、ちょっと妬いちゃいますね」
「長太郎にされたからだよ」
私を抱きしめる腕に力がこめられる。
「じゃなかったら、こんなに気持ちよくならない」
「宍戸さん……」
閉じた足の内側を擦らせて、宍戸さんは小さく身震いした。
「んー、まだちょっと痺れてる。今度は強い方でするなよ?」
「はい……ごめんなさい」
「でもちゃんと気持ちよかったから、あとで長太郎にもしてあげるからな」
達した後の蕩けた素顔をそのままに、宍戸さんは私を見上げていたずらっぽく微笑んだ。
おでこにキスをするとくすぐったそうにして、また胸の谷間に顔を埋めてしまった。
「宍戸さん」
「ん?」
「あの、なんで急にこういうものを使いたいなんて言い出したんですか?」
「えっ、あー、えっとだな」
「もしかして、私じゃ満足できなくなったんですか……?」
顔を上げた宍戸さんは一瞬きょとんとして、すぐにハッとした表情に変わった。
「へ? いやいや、そんなことないって」
「でも、ローターはまだしも、バイブって……言いたくないけど、その、私にはついてないものだし……」
「あ~~違う違う! そういうつもりじゃなくて!」
「だったらなんで……」
「えっと、その」
「?」
「マ、マンネリ防止っていうか」
「マンネリ?」
「雑誌で読んだんだよ。セックスレスは破局の原因になるって」
「セックスレス……え?」
秘密がばれてしまったときみたいにバツが悪そうにはにかみながら、宍戸さんは私のほっぺたを撫でた。
「一緒に暮らし始めて一年くらいになるけど、そういえば最近あまりしてないなって思って……するときも長太郎まかせっていうか……だからもうちょっとくらい自分から積極的になってみた方がいいんじゃないかと、思ったんだけど……」
「そんな! 確かにあまりえっちしてないかもしれないけど、だからって別れるなんてそんなこと!」
宍戸さんが唇を寄せてくる。優しく下唇を食まれて、「ごめん」と言われた。
「でも、おまえを気持ちよくしてあげたくなったのは、本当だよ」
唇を舐められて、舐め返そうと舌を伸ばしたら胸に甘い疼きが走った。
宍戸さんが私の乳首を摘まんだのだ。
「気持ちいい?」
「っ、はい、気持ち、いいです」
「そっか」
指先で優しく弾かれて、切ない快感に吐息が漏れてしまう。
蕩けていたはずの宍戸さんの瞳に射貫かれて、下腹の奥深いところがキュンと収縮した気がした。
「次は長太郎の番」
そう言って私の体を口づけながら下っていく宍戸さんにバレないように、バイブレーターをこっそり枕の下に隠した。
やっぱりちょっと嫉妬しちゃうから、今夜はまだ宍戸さんの中に入れてあげない。
いつか出番がくる日までクローゼットに仕舞っておこう。
どこに隠そうか考えようとしたら内ももを強く吸われた。
「んっ」
思わず声が出てしまう。
紅く痕をつけた宍戸さんは満足そうににっこりして、私のショーツに手をかけた。