ベッドに押し倒されて、右手も左手も繋がれシーツに縫い止めるように拘束された。
ゆっくり覆い被さってきた宍戸さんは俺の唇に唇を寄せて、そして啄むようにキスをした。
「なぁ、今、なにしてる」
宍戸さんが問いかける。
分かりきっていることを俺に答えさせるべく、宍戸さんは唇を寄せたままもう一度囁いた。
「長太郎、俺たちはなにをしてる?」
「キス……してます」
言葉を発するために開いた唇の隙間から、熱い舌をねじ込まれる。
抗ってはいけない。成されるがまま受け入れることが、俺に唯一許されたことだからだ。
迎えた宍戸さんの舌は、俺の舌と絡むことなく上あごに触れた。
凹凸のひとつひとつに舌の表面を密着させ、ねっとりと時間をかけて行き来する。
わざともったいつけて俺を弄ぼうとしているんだ。
なんてにくたらしいんだろう。
それでも快感は否応なく押し寄せてくるから、閉じたまぶたが震えてしまって仕方なかった。
「っ、は」
肌の下から劣情が湧き出てくるようで、ぞくぞくする。
連鎖するようにしてジリつき始めた下腹部がもどかしい。熱を逃がすように、流れ込んでくる唾液を懸命に飲み込んだ。
繰り返し、繰り返し、宍戸さんの舌が俺の上あごを舐め上げる。
舌の裏を舌先でつついたら、宍戸さんがわずかに口端を上げて笑うのが唇に伝わった。
ああ、舌を絡めて、吸い付きたい。
生温かい気持ちよさが、もっと欲しい。
追いかけても逃げられて、あげく唇を離してしまった宍戸さんは俺を見下ろして目を細めた。
「えろい顔してる」
「だって」
「もっとしたかっただろ」
「……宍戸さんの、いじわる」
掴まえたままの両手を握り直した宍戸さんは、俺の非難を楽しそうに聞き流した。
「これから、どうする?」
緩く勃ち上がった俺の情欲に腰を擦りつけながら宍戸さんは言う。
「宍戸さんの、なかに」
「なかに?」
いじわるな笑みを浮かべた宍戸さんは、またしても分かりきっていることを俺に答えさせるべく囁いた。
「なぁ、なかに、どうしたい?」
本当に、にくたらしい。
この手を振り払って、宍戸さんを組み伏せて、思うまま触れてみたい。
好き勝手にキスをして、服の下の肌を暴いて、わけがわからなくなるくらいとけ合いたい。
でもそんなこと出来やしないってわかっていた。
だって、握られた手のひらがずっと熱い。
煽るようにしか俺を誘えないのは、甘えることが下手くそなせい。
もっと素直に俺を求めたいくせにプライドが邪魔をしてしまう宍戸さんを、かわいいと思ってしまうのはいけないことだろうか。
俺って浅ましいのかな。
だからこそもっと翻弄されてみたくて、宍戸さんの両手を強く握り返した。