2022/12/18発行『住めば都のディストピア』https://ggggggg.booth.pm/items/4408273 に収録した『コインランドリーブルース』で語られなかった夜の話。酔った宍戸に奉仕する長太郎。 宍戸さんの設定はサンプル(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18885845)、長太郎の設定は新刊を読んでいるとよりわかりやすくなっています。
<注意>
事故により宍戸さんの体の一部がサイボーグ化しています。
また、いわゆる義体化や電脳化が一般的になっている未来のお話です。
仕事のことなど、もう頭にはなかった。
鳳にすすめられるままワインをフルボトル空けてしまった宍戸は、完全に酔いが回った状態で連れ帰られ、今に至る。
セントラルシティ中心部に堂々と立つレジデンスの高層階、その一室が鳳の住居だ。
セキュリティも、衛生管理も、当然ながら宍戸の住む居住区とは雲泥の差。
違法増築などあるはずもなく、空調設備も万全、常に快適な空間が保たれている。
自分の体を支えるのさえ億劫な宍戸は、鳳の肩を借りて行きついた寝室に踏み込むやいなや広いベッドに身を投げ出し大の字になった。
何度も寝転がったことのある宍戸にとっては、いまさら動物の巣のような己の寝床と鳳のベッドのマットレスやシーツの質の高さを比べて自虐的な揶揄いを口にする気は起きない。
それよりも、あたりまえのように覆い被さってきた鳳に甘噛みされる首すじから伝播したように火照りだした体が熱くてたまらず、宍戸は自ら衣服を脱ぎ始めた。
「暑いんですか? 冷えちゃいますよ。お酒が回ると、すぐ脱いじゃうんだから」
そう言いつつも、鳳は宍戸を手伝い器用に服を脱がせていく。
いつもは風邪をひくだのなんだの口うるさいくせに、こういうときだけ調子のいいことだ。
酔いで手元がおぼつかない宍戸は自分で脱ぐのが面倒になって、鳳にすべてを委ねて素肌にされるのを大人しく待った。
「さぁ、宍戸さん。お望みの通りですよ」
下着もすべて剥ぎ取られた姿でシーツに横たわる宍戸は、ビジネススーツをきっちりと身に纏う鳳を見上げてそっと熱い吐息を漏らした。
宍戸は、目の前の非の打ちどころなく端然たる様の男が自分に触れるとき、その瞳の奥にどれほどの熱情を滾らせているかを知っている。
それだけではない。指先の熱さも、肌を這う舌の艶めかしさも、知っている。
鳳との情事を思い出しただけで鼓動が速まった気がした。
ドキドキと甘く苦しいのは、アルコールのせいだけではないはずだ。
だってこんなに欲しいのだから。
宍戸は言葉よりも早く鳳の腰に右足を絡ませ、手のひらで頬を包んだ。
目を細めると、鳳の顔が近づいてくる。
触れ合った唇をもっと深いものにしたくて、宍戸は鳳の髪の毛を混ぜこんだ。
立てた左足と絡めた右足で鳳の体を引き寄せる。
肌に触れる布地が煩わしくて、宍戸はジャケットを引き剥がそうと鳳の背中に爪を立てた。
「引っ張っても脱げませんよ」
触れた唇の間で、鳳は嬉しさを滲ませて囁いた。
酔った宍戸が普段とは比べ物にならないくらい性欲に忠実に、しかも驚くほど素直になることは出会ったあの夜から知っている。
きっとこれが本性なのだ。
そうでなければ、少し酔って気が大きくなったくらいでこんなに大胆に誘ってくるわけがない。
その証拠に、宍戸は翌日に記憶を飛ばすタイプではないにもかかわらず、幾度となく酔っぱらっては鳳を求めてきた。
つれない態度は本心の裏返し。
宍戸に求められるたびに、鳳は手足をジタバタさせて喜びを表現したいほど嬉しくてたまらなくなるのだ。
「待ってください。ちゃんと準備しますから」
はしゃぎたい気持ちをグッと抑えて、宍戸の鼻先にキスを落とす。
ジャケットを、ネクタイを、シャツを、次々とベッドの下に放っていく。
薄く開いた唇から浅い呼吸を繰り返す宍戸の目元が赤らんで、潤んだ瞳が鳳の所作をまじまじと見つめている。
落ち着きを装って行儀よく服を脱いでいく鳳は、宍戸の瞳に心の底まで見透かされていそうな気がした。
すべて見透かされたところで、不都合なことなど何もないのだが。
「長太郎」
宍戸と同じく素肌になった鳳は、呼ぶ声に導かれてベッドに体を沈めた。
腕の中に宍戸の体を抱きとめて唇を重ねる。
すると、宍戸は待ってましたといわんばかりに鳳に体をすり寄せ、ゆるく勃ちあがった性器を押し付けてきた。
「早く」
かすれた囁きが、鳳をいっそう煽る。
鳳は唇を重ねたまま指先を滑らせ、宍戸のわき腹を撫でた。
肋骨の凹凸を感じながら手のひらを滑らせ、呼吸するたび上下する胸元をまさぐる。
柔らかい胸筋を押し上げるように揉み込んでは、ときどき尖りの周りを爪の先でかすめてみる。
もどかしさに喉を鳴らす宍戸は、鳳の舌に吸い付いてその先を促した。
宍戸のおねだりをないがしろにするような鳳ではない。
揉み込んで小さな山になった胸の頂点を優しく爪弾く。
宍戸は小さく体を跳ねさせて悦んだ。
弾いて、摘まんで、引っ張って、捏ねて。
刺激されるたびに宍戸の喉から甘ったるい声が漏れ、鳳はその声ごと啜るように口づけを深めた。
鳳の指先に弄ばれる尖りはぷっくりと膨らみ、朱に色を変えていく。
もっともっと、とねだる宍戸は胸を突き出して鳳にしがみついた。
「気持ちいい?」
「ん、っ」
「宍戸さん、ここ、触られるの好きですもんね」
「んぅ、すき……かも」
「かも、なんて。ここだけでイッちゃいそうなのに」
鳳は、十分すぎるほど敏感になった尖りを、たっぷりと唾液をまとわせた舌を押し付けるようにして舐めあげた。
「ひ、っ……!」
宍戸は強い刺激から反射的に逃げようとする。
その体を押さえつけた鳳は、留守になっているもう一方の尖りを指先で摘まむと、先ほどと同じように緩急をつけて弄り始めた。
優しくも決して休ませてはくれない手管で、鳳は確実に宍戸を昂らせていく。
もともと性器と同じくらいに胸の尖りへの刺激に弱い宍戸は、鳳に責め立てられ成す術もなく限界を迎えつつあった。
「やめ、あぁ、そんなに、したら」
宍戸の制止など鳳が聞くはずもない。
胸を反らし、シーツを握りしめた宍戸は、下腹に蓄積した快感が今にも弾けそうになっていることを鳳に伝えなければと口を開いた。
その刹那、鳳の舌に弄ばれていた尖りに稲妻が走る。
「っ、かは、っ」
歯を立てて甘噛みされたと認識する間もなく、宍戸のペニスから精液がぼたぼたと溢れはじめた。
体を強張らせて声をなくした宍戸の様子に顔を上げた鳳は、その性器から勢い弱く射精していることに気付き、口の端がゆるむのを抑えられなかった。
「宍戸さん、出ちゃったの?」
「お、おまえが、んっ、しつけぇ、から」
ねばついた精液は、飛び散ることなく零れ落ち宍戸の下生えを汚している。
扱いたり口淫したりしたときのように直接的な刺激を受けずに達すると精液が飛び出さず漏れ出るようになるのか、と鳳はしばし宍戸の吐精を観察した。
「あんま、じろじろ、見んじゃねぇ」
ようやく精を吐き出し終えた宍戸が、シーツに脱力して鳳を睨みつける。
「本当、すごい」
「はぁ?」
「初めてしたときからこうだもんな。宍戸さんって、本当に気持ちよさそうにセックスしますよね」
達したばかりの宍戸をキスで労った鳳は、一旦ベッドから降りローションボトルとコンドームを持って戻ってきた。
宍戸の腹を濡らした精液を拭き取ってきれいにすると、白濁の雫が垂れる亀頭に口づけ、軽く吸った。
「んっ、イッたばっかなんだから、触んな」
「宍戸さんの味だ。ちょっとくらい舐めてもいいでしょ?」
宍戸は、舌を出して裏すじを舐め上げようとしている鳳の髪の毛を引っ張る。
「だめだ。イキすぎると、おまえの挿入れる前に腹ん中が苦しくなるんだよ」
「えぇ? 敏感すぎません? ナチュラルボーンでこの感度だなんて、宍戸さんの体を研究したらアダルト向けのバーチャルコンテンツの精度をあげられそう。インストールした人がみんな宍戸さんくらい気持ちよくなれちゃう商品が出まわったら、最新型のセクサロイドなんて誰も見向きしなくなるかも」
宍戸に髪の毛を掴まれながら、鳳は饒舌に語った。
股間の近くで褒められてるのかよくわからないこと言われ、宍戸は呆れ顔で体を起こす。
「なに馬鹿なこと言ってんだ」
だが酔いの醒めない頭がふらふらと揺れ、宍戸は起きてはいられずシーツに突っ伏した。
「大丈夫ですか?」
「んぅ」
宍戸はうつ伏せのままシーツに顔をうずめて唸る。
「まだお酒残ってるんだから、無理に動いちゃだめですよ」
「んー」
心配そうな手のひらに背中を撫でられる。
繰り返し撫でられているうちに、宍戸はまだ下腹に燻ったままのものをどうにかしてほしくなってきた。
もぞもぞとのろまに動き始める。
そして宍戸は、突っ伏したまま尻を突き出すように高く上げた。
背を撫でていた鳳の手のひらが離れる。
寂しさが心をかすめて、宍戸は背後をうかがい見るようにして鳳に目線をやった。
「長太郎」
宍戸の視線の先の鳳は、宍戸の痴態を見下ろしゴクリと生唾を飲んだ。
「なぁ、ここ」
宍戸は両手をそろりと後ろにやると、鳳に見せつけるように指先で太ももの裏を這い上がり、尻たぶを掴んだ。
「俺、一人で準備できねぇからさぁ」
そして鳳を受け入れるところを広げるように割り開いて見せた。
「おまえが、準備してくれよ」
自ら後孔を見せつける淫猥なポーズで誘う宍戸を目の前にして、鳳は飛びつく以外の選択肢を持っていなかった。
躊躇うことなく舌を突き出し、アナルに唾液を塗りこめる。
鳳が舌を動かすたびに、宍戸は尻を震わせながらシーツに声をしみ込ませた。
夢中になって舐めしゃぶっていると、蕾は物欲しそうにヒクヒクとしだす。
いつの間にか、宍戸は尻を掴んでいた手を離しシーツを握りしめていて、再び勃ちあがったペニスから溢れ出た透明な愛液が糸を引いていた。
宍戸の背に汗が浮かんでいる。
背骨のへこみにたまった汗を掬い取るように鳳が人差し指を滑らせると、宍戸は背をブルブルと震わせて反応した。
「ちょ、たろ」
「うん、宍戸さん」
「もう」
「たまらなくなっちゃった?」
ローションで濡らした中指を、可愛らしく蠢かせて誘うアナルにゆっくりと挿し入れる。
ようやく胎内に与えられた刺激に歓喜するように、宍戸は体の芯を震わせてか細く喘いだ。
「あ、ぁっ、ぁ」
はじめはゆっくりと、徐々に性感帯を狙って、鳳は宍戸の中を蹂躙する。
挿入する指を増やすと、ぐぷぐぷと猥雑な水音を立てて手淫を施し始めた。
的確に前立腺を撫で続けられ、聴覚まで恥辱に犯されて、宍戸はシーツに唾液が零れるのも構わず呻くように嬌声を上げることしか出来ない。
痛いくらいに張りつめたペニスには触れられもせず、体を渦巻く快感でおかしくなりそうだ。
「や、もう、へんに、なる」
性的な感覚が伝達しにくい人工生体義足の左足に対して、生身の右足ばかりがガクガクと大きく震える。
腰を高く上げていることができなくなった宍戸が崩れるようにベッドに沈むと、コンドームを装着した鳳は宍戸を背中から抱きしめ横抱きにし、息つく間もなく大きく張りつめたペニスを挿入した。
「あぁ、っ!」
宍戸は凶暴な質量を受け入れた衝撃から逃れることなく射精する。
先ほどとはうって変わって勢いよく吐き出された精液がシーツを汚した。
「っ、宍戸さんのなか、きつくて、優しくできないかも」
「いい、いい、やさしくなんて、しなくていい」
達したばかりの宍戸の胎内が鳳を締め付ける。
鳳は快感に打ち震える宍戸の体をきつく抱きしめて腰を振った。
羽交い絞めにされた宍戸は容赦なくペニスを打ち付けられ、意思とは関係なく再び射精してしまう。
「あ、んあっ、ちょうたろ、っ」
「宍戸さん、宍戸さん、すごい、きもちいい」
鳳の荒い吐息が耳元にかかる。
切羽詰まった声で何度も名を呼ばれ、宍戸は脳髄まで痺れる心地だった。
激しく渦巻く快感に翻弄され、恍惚とする宍戸の性器が突然鳳の手のひらに包まれる。
だが宍戸の予想に反し、鳳は宍戸のペニスを刺激することなく握りこんだまま腰を振り続けた。
「なん、っ」
鳳の思惑はすぐに宍戸の理解することとなる。
性器を握られ、宍戸の精液は行き場を失ったのだ。
射精できなくなった宍戸は、胎内に植え付けられる快感を逃がすことが出来ない。
するとどうなるか。
宍戸の体は性感を胎内で発散させようと、自らを造り変えてしまう。
数えきれないほどの鳳とのセックスでドライオーガズムを覚えてしまった宍戸の体は、今では鳳の手管次第で容易に導かれてしまうようになっていた。
「なぁ、っ、あれ、すんの」
「深いの、気持ちいいでしょう? ね、宍戸さん、俺も、もう」
「は、やばいって、っ……ん、むり、や、ぁ、きそう、くるっ、くる、あ、あぁぁ」
宍戸の胎内がきつく収縮する。
鳳はたまらず精を吐き出しながら、大きく跳ねる宍戸の体を強く抱きしめた。
宍戸の性器は射精していない。
声にならない声を上げて胎の奥で達する宍戸は、体質からして絶頂が長引きやすい。
そんな宍戸にとって、ドライオーガズムはどれほどの快感を伴って宍戸の体を蝕むのだろうか。
鳳は、宍戸と繋がった性器伝いに宍戸の快感の深さを知り、残滓まで絞り上げられる感覚に身を震わせた。
「宍戸さん、宍戸さん」
「んあ」
宍戸が頬を叩かれる感覚で意識を取り戻したのは、セックスが終わってまもなくのことだった。
汗とローションと精液にまみれ、体はまだ火照ったまま。
だが不思議と頭はすっきりしていた。
酔いが醒めたわけではなさそうだが、強すぎる快感で覚醒したのかもしれない。
「大丈夫ですか?」
「んー」
「無理させ過ぎちゃいましたね。ごめんなさい」
「いいって。よかったし。それより」
重い体を起こした宍戸は、同じく上体を起こした鳳の膝に向かい合って跨った。
鳳の唇を奪い、舌を絡める。
激しくなる口づけに鳳が気を取られているところで、宍戸は鳳の陰茎を両手で包み込み扱き始めた。
「えっ、宍戸さん!?」
声を上げる鳳の唇を塞いで、宍戸は手淫を続ける。
そう時間はかからずに勃起したペニスに手早くコンドームを被せると、宍戸は腰を浮かせ、あっという間に後孔で鳳の性器を飲み込んだ。
「ふぅ。慣れてっけど、やっぱおまえのデケェな。腹んなかいっぱいになる」
「びっくりしたぁ。もう二回目ですか? 休まなくて平気?」
「おまえは二回目だろうけど、俺はもう何回イッたかわかんねぇよ」
対面座位で繋がったまま鳳に抱きついた宍戸は、啄むように口づけた。
鳳の膝の上で、性器を飲み込んでM字に開脚している姿はなかなかに卑猥な姿だ。
「どうせずっとイッてるみたいにわけわかんなくなるんなら、セックスしたまま休んでも同じだろ」
腰を揺するでもなく鳳に抱きつき、甘えるように唇を押し付けてはときたま甘い吐息を漏らす。
とろんとした瞳で熱っぽく見つめられる鳳は、こんな生殺しのような休憩があってたまるかと情けなく眉尻を下げた。
「宍戸さぁん。動いちゃだめですかぁ?」
「だぁめ。あとで俺が動くから、もうちょっとこうしてたい」
口元を緩ませてキスをされては、鳳は宍戸のいうことを聞くしかなくなってしまう。
宍戸が甘えてくれるのは嬉しいが、体温の上がった宍戸の胎内と繋がったまま平常心でいろというのは酷なものだ。
「触るのもだめですか?」
「だめ。だっておまえ、いじわるするもん」
「い、いじわるなんてしてないですよ」
「したろ。乳首でイかせたり、ちんこでイかせてくれなかったり」
「それはプレイの一環というか……宍戸さん、気持ちよさそうだったじゃないですか」
鳳の言葉に眉根を寄せた宍戸は、鳳の下唇を甘噛みして引っ張った。
「うるさい。もういい。おまえは黙って見てろ」
そういうと、宍戸は後ろ手をついて上体を反らせた。
鳳からは宍戸の性器が良く見える格好だ。
左手で上体を支えた宍戸は、おもむろに右手で自分の性器を包んだ。
二度三度右手を上下させて硬くなったペニスを、ゆっくりと扱き始める。
突如目の前で恋人のオナニーショーが開始され、当然のように鳳のペニスは反応した。
「おい、デカくすんな」
「しょうがないじゃないですか! こんなの見せられたら興奮するに決まってる! 自分でするところなんか、俺が何回頼んでもしてくれなかったくせに!」
「嫌ならやめるけど」
「やめてとは言ってないです」
「ん。っはぁ。気持ちよくなってきた。俺も興奮してんのかも」
笑みを浮かべながら自慰をする宍戸は、咥えている鳳のペニスを時々ささやかに締め付ける。
鳳は、緩やかに繰り広げられるセックスのようなオナニーの一部始終を見守り続けるしかなかった。
「っ、やば、さっき、セックスしまくったから、もたねぇかも」
「宍戸さんの、もうぐちゃぐちゃじゃないですか」
溢れるカウパー腺液で濡れそぼる亀頭を指摘すると、宍戸は頬を赤らめて唇を噛んだ。
自分の痴態を言葉にされ、恥じらいとともに快感を覚えている。
そんな宍戸の様子にピンときた鳳は、なおも言葉を続ける。
「触ってないのに、宍戸さんの乳首もツンツンしてきちゃって」
「っ」
「いいんですか? 触って欲しそうにぷっくりしてますよ」
「ん、うぅ」
「宍戸さんは両手塞がってるから無理かぁ。触ってあげたら、きっと気持ちいいですよ」
「……」
「指の先でね、優しく摘まんであげるんです。引っ掻いてあげるのも気持ちよさそうですよね。それから押し潰してグリグリするのも、宍戸さん好きですよね。舐めるのは、自分じゃできないかぁ」
鳳の言葉は、性感のはざまで揺れる宍戸の強情を突き崩すには十分すぎた。
想像するだけできゅんきゅんと腸壁がうごめき、先端から愛液が溢れてくる。
鳳の言葉通りに触って欲しくなってしまった宍戸は、鳳を睨みつけながら唇を開いた。
「おまえ、性格悪いぞ」
「そうですかね? でも、俺なら今すぐ宍戸さんのこと気持ちよくできますよ」
「ん……わかったから、早く。もう、イきたい」
切なそうに眉根を寄せて見つめられては、これ以上意地の悪いことはできない。
鳳は両手を使って、宍戸の尖りをそれぞれ小刻みに弾いた。
「あっ、どっちもしたら、やばいって」
「宍戸さん、手が止まってますよ」
「っ、くそっ」
鳳に煽られた宍戸は腰を押し付けペニス深くまで飲み込むと、右手の動きを速めた。
自らと鳳の手によって昂っていく体を、まざまざと鳳に見せつける。
その淫らさに、鳳はこのままでも達してしまいそうな気すらした。
「っっ、あぁっ、ちょうたろう」
ついにたまらなくなってしまった宍戸が鳳に抱きつくと、喉を震わせて甘い声で啼きながらがむしゃらに腰を上下させ始めた。
切羽詰まった性急な律動に、鳳は奥歯を噛み締めて宍戸を掻き抱く。
二度目の性交は絶え絶えな吐息の中でピークを迎え、宍戸が果て鳳の腹を精液で濡らすと、続いて鳳も宍戸の腹奥で精を吐き出した。
「我慢できなくなっちゃいました?」
「なっちゃったな」
「ふふ」
「ふっ、はは」
二人は体を預け合いながら肩を揺らした。
「なぁ」
「どうしました?」
「おまえの、舐めてやろうか」
「え? いいんですか?」
「今ならなんでもやれる気がする。いいぜ。俺にやってほしいこと言ってみろよ」
なんて楽しい夜だろう。
たまにはこんな夜も悪くない。
酒のせいか、セックスのせいか。
宍戸は気が大きくなっていた。
アルコールでは記憶を失えない宍戸が翌朝どうなったか。
それは周知のとおり。