夏祭り
起きてすぐにベランダのミニトマトに水やりをしているとどこからか祭囃子が聞こえてきた。そういえば数日前に夏祭りのポスターを見かけた気がする。確か開催場所は近くの神社。宍戸さんを起こすついでにそのことを話したら散歩がてら行っ…
続きを読む →起きてすぐにベランダのミニトマトに水やりをしているとどこからか祭囃子が聞こえてきた。そういえば数日前に夏祭りのポスターを見かけた気がする。確か開催場所は近くの神社。宍戸さんを起こすついでにそのことを話したら散歩がてら行っ…
続きを読む →日曜日の昼下がり。出掛ける支度を整えた俺たちは玄関に向かって幾分かひんやりとした廊下を進んだ。「とりあえず先にどこかで腹ごしらえしましょうか。そのあと映画なんかどうです? 宍戸さん、見たいものがあるって言ってませんでした…
続きを読む →「長太郎、具合どうだ?」トーンを抑えた聞きなれた声がして、俺はまぶたを開いた。今朝目覚めたときから熱があり大事を取って横になっていたのだけれど、重くなるまぶたに反してなかなか眠れず今に至る。宍戸さんが俺のおでこのぬるくな…
続きを読む →今夜もまた、真っ暗な寝室に息をつめて踏み入れる。家具の配置を思い出しながら、体に染みついた感覚を頼りにベッドにたどり着いた。微かに寝息が聞こえる。ベッドの左半分、いつもの定位置で既に夢の中にいる長太郎の気配をうっすらと感…
続きを読む →背中にぴたりとくっついて眠っていたはずの長太郎に首筋を甘噛みされる。鳩尾を撫でる温かな手のひら。その指先は俺の鼓動を確かめるようにゆっくりと左胸を這い、尖りを擦り始める。ゆうべ散々弄ばれたせいで、些細な刺激ですら俺を夢の…
続きを読む →酔っ払って帰ってきた宍戸さんはいじわるだ。ソファーで本を読みながら宍戸さんの帰りを待っていた俺は「おかえりなさい」を言う間もなく襲撃された。「ちょうたろー、あーん」俺の膝に乗っかった宍戸さんは、コンビニで買ってきたショー…
続きを読む →※鳳宍に娘が産まれています。 白い砂浜を踏みしめる。潮風と照り付ける太陽を肌で感じて、波の音を聞いた。長太郎が波打ち際まで俺の手を引く。笑顔。打ち寄せる波。つま先が、濡れる。 「おとうさん! おきて!」「んあ?」毛布ごと…
続きを読む →これは人類の誰しもが、第二の性と呼ばれるα、β、Ωのいずれかをもって生まれてくる世界のお話。 宍戸亮は希少種である男体のΩとして生を受けた。生まれてきた子がΩであることを知った両親は、βである彼の兄と同様に宍戸をのびのび…
続きを読む →秋晴れ、空が高い。窓際にはこじんまりした丸テーブルと、アンティーク調の装飾が施された椅子が二脚。その片方に腰掛けて外を見ると、黄に色を変えた楓の葉っぱが切りそろえられた芝生の上にちょうど着地したところだった。「晴れてよか…
続きを読む →森を歩こうという誘い文句があるらしい。昔読んだ本で得た知識なのだが、なんてことはない、セックスしようという意味だ。 どこの国の言葉かはっきりとは覚えていないが、おそらくは森の中が逢引きに適している環境なのだろう。 自然が…
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