エスケープ・ジャーニー

これは人類の誰しもが、第二の性と呼ばれるα、β、Ωのいずれかをもって生まれてくる世界のお話。 宍戸亮は希少種である男体のΩとして生を受けた。生まれてきた子がΩであることを知った両親は、βである彼の兄と同様に宍戸をのびのび…

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あきうらら

秋晴れ、空が高い。窓際にはこじんまりした丸テーブルと、アンティーク調の装飾が施された椅子が二脚。その片方に腰掛けて外を見ると、黄に色を変えた楓の葉っぱが切りそろえられた芝生の上にちょうど着地したところだった。「晴れてよか…

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ウォーク イン ザ フォレスト

森を歩こうという誘い文句があるらしい。昔読んだ本で得た知識なのだが、なんてことはない、セックスしようという意味だ。 どこの国の言葉かはっきりとは覚えていないが、おそらくは森の中が逢引きに適している環境なのだろう。 自然が…

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あいのはなし

『かたちあるもの』の続きです 顔面を涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃにした長太郎を玄関で見送って、さて、と踵を返したところでようやく実感が湧いてきた。じわじわと熱を持ち始めた頬を手の甲で拭う。「あ~~……」ついに渡してしまっ…

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かたちあるもの

(このサイトでのみweb公開) 本日はお日柄も良く、真っ青な晴天に恵まれ、寒くもなく暑くもなく。ジューンブライドには少し早い五月晴れ。宍戸さんと俺は共通の友人の結婚式に参列した。同い年の新郎とは大学時代に出会った。内部進…

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朝のはじまりはきみ

久しぶりに激しく衝突した。お互いに虫の居所が悪かっただけの実のない喧嘩だ。たしかきっかけは俺が宍戸さんの呼びかけに返事をしなかったなんて、そんな些細なこと。俺にとっては些細なことでも、宍戸さんにとっては癪に障るようなこと…

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あいくるしい

朝から雨が降っている。昨夜の情事の疲労がまだ腰のあたりに残っていて、ベッドから起き上がるのも、服を着るのも億劫で、日曜だしいいか、と目覚めてからしばらくぼぅっとしていた。隣にはまどろむ長太郎がいて、その素肌の温かさを甘受…

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ゆめとうつつ

(このサイトでのみweb公開) SIDE 宍戸 荒い呼吸と不規則に喉を震わせるあられもない声。汗だくの肌がぶつかり合う音と湿った空気。光を通す白いカーテンは西日でうっすら朱色に染まっていた。肩にかけた俺の右足を抱き込むよ…

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みずみずしい

何かに付けてヘべれけになるまで飲んでしまうのが大学生という生き物だ。斯くいう俺も例に漏れず場の雰囲気に流され、飲んでは飲まされ、体の感覚が自分が制御できる範疇を超える一歩手前でそろそろ会もお開きということになり、帰り支度…

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はるひぐれ

結局、俺は長太郎と付き合うことになった。もちろん、恋人としての意味で、だ。俺の生活がなにか変わったかと聞かれれば、何も変わらないと言える。大学に行って、テニスして、バイトして、その繰り返し。だけど、ふとした瞬間に、例えば…

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