ぬくもりの檻
「ただいま帰りましたぁ」玄関を施錠する金属音からややあって、リビングのドアが開いた。足元を這うような冷気とともに帰ってきた長太郎は、鼻の頭と頬を真っ赤にして、髪の先が少し濡れている。「おう、おかえり。なんだ、雨降ってきた…
続きを読む →SSを上げていきます。
「ただいま帰りましたぁ」玄関を施錠する金属音からややあって、リビングのドアが開いた。足元を這うような冷気とともに帰ってきた長太郎は、鼻の頭と頬を真っ赤にして、髪の先が少し濡れている。「おう、おかえり。なんだ、雨降ってきた…
続きを読む →せっかくの日曜日だというのに、朝から宍戸さんの様子がおかしい。どんな風におかしいのかというと、ぼーっとして、なんだか動きもゆっくりしている。まさか風邪でもひいたんじゃないかと思って熱を測ってみたけれど、体温計に示された数…
続きを読む →酔った勢い、というものはないらしい。アルコールに絆された本性が露呈するだけで、それは勢いでもなんでもないという。つまり酔っているときの言動こそが、普段は理性の裏に隠している本当の姿ということになる。「宍戸さんはひどい人で…
続きを読む →0:00 SIDE鳳 「あ、宍戸さんこんばんは! メリークリスマスです!」「おー、本当に0時きっかりに電話してきたな」「だって、約束しましたから」スマートフォンの向こうで、宍戸さんは少し呆れたように言った。昨日、日付が変…
続きを読む →注意:女体化百合 「買っちゃったな」「ドキドキしましたぁ」「誰かに見られたりしなかったかな」「マ、マスクもしたし大丈夫……だと思います」ベッドの上に並べたのは、なんでも揃うディスカウントストアでさっき買ってきたビビッドな…
続きを読む →サークルの飲み会が長引いて、家に帰りついた頃にはすでに日付が変わっていた。玄関には俺のものじゃない見慣れたスニーカー。宍戸さんが来ているようだ。うちの合鍵を渡しているから、ここには自由に出入りが出来る。「ただいまぁ」リビ…
続きを読む →かわいい、と宍戸さんは言った。ぷっくり朱く、トロトロになった恥ずかしいところで俺を飲み込んで、焦点が合っているのかいないのかわからないまなざしで、かわいい、と言った。乗っかられた俺は宍戸さんを見上げていることしか出来なく…
続きを読む →長太郎は王子様らしい。ピアノが弾けて、物腰柔らかで、いつも優しくて、スラッとした長身で、他の男子とは違ってバカ騒ぎしたりしないし、にこやかに微笑む姿が王子様そのものなんだと。クラスの女子たちからその話を聞いたときは鼻で笑…
続きを読む →宍戸さんと一緒に暮らし始めて一か月が経った。お互いの生活の癖みたいなものが少しずつ見え始め譲ったり譲られたりしながら過ごす日々が楽しくて、だけど、一つだけ悩んでいることがある。それは最近、宍戸さんの視線が俺を落ち着かなく…
続きを読む →起きてすぐにベランダのミニトマトに水やりをしているとどこからか祭囃子が聞こえてきた。そういえば数日前に夏祭りのポスターを見かけた気がする。確か開催場所は近くの神社。宍戸さんを起こすついでにそのことを話したら散歩がてら行っ…
続きを読む →