ゆうべから大雨が降り続いていて、せっかくの週末なのに家から出るのも億劫で、そういうときに長太郎とすることといったらひとつしかない。
ベッドの中でまどろんで、くっついて、あちこち触れあっていたら自然とそんな気分になる。
そのまま一直線に終わりまで済ませてしまうのもいいのだけれど、最近は少し趣向が変わってきた。
ほどほどに準備を整えたら、まずはじめに長太郎と繋がるのだ。
うしろからぴったりくっついて抱きしめられて、はじめ、覚醒しきっていない体は異物感しか認識しない。
でも、これがだんだんよくなっていくことを、俺の体は知っていた。
「一日中降るのかなぁ」
長太郎は俺の腹を撫でながら、うなじのあたりで呟いた。
「どうだろうな。洗濯ものたまってんのに」
うなじに生ぬるいものが触れる。
ゆっくりと舐め上げられると背すじが震えそうになる。
「昨日噛んだとこ、まだちょっと赤くなってる」
うなじと肩の境のあたり、長太郎が舌をあてているところは、確かゆうべ達するときに思いっきり噛まれた記憶がある。
「痕残すなって言ってんのに」
「そんなに強く噛んでないですよ。多分明日には消えるとおもう」
長太郎の手のひらが俺の腹を上に下に行ったり来たりしている。
寝起きの長太郎の肌はこどものように温かくて、こんな風に撫でられると眠くなってくる。
「なに」
「んー?」
「それ、眠くなるんだけど」
「それ? あぁ、おなか? これ、眠くなるんですか? えー、赤ちゃんみたい」
長太郎は手のひらで腹をぽんぽんとしはじめた。
こどもをあやすようにされるのは雰囲気にそぐわない。というより心外だ。
「寝ていいなら二度寝するけど」
体を離すように身じろぎするそぶりをしてみせると、長太郎の長い腕が絡みついてきた。
「だめです。寝ちゃだめ」
さっきよりもぴったりとくっついてきて、耳元でだめと囁かれる。
今度こそ背すじがゾクゾクと震えてしまった。
「こういうのも気持ちいいんですね」
「びっくりしただけだって」
「本当かなぁ?」
長太郎の手のひらが、また腹を上に下に行き来する。
「迷っちゃって」
「は?」
腹を滑る指先が、鳩尾を通って胸元にたどり着く。
「こっちにするか」
その指に胸の先を擦られて、刺激に息が詰まる。
「っ」
「良さそう」
「っ、ふ」
もっとしてほしいと伝える前に、長太郎の指先は離れ体を下っていってしまった。
腹を滑り、へそをかすめて、もっと下にたどり着く。
「あっちもいいけど、こっちも良くて。迷っちゃうんですよねぇ」
根もとに触れられたとき、長太郎の言っている意味がわかった。
俺の感じやすいところ、どちらを弄ぼうか。
長太郎は根もとだけでなく、足の付け根や太ももの内側にも指を滑らせる。
そうやって俺を焦らして面白がっているのだ。
「俺で遊ぶな」
「そんなつもりじゃなかったんですけど。でも、そういう言い方もいいですね。俺と遊びましょうよ」
長太郎の指先が俺の硬くなったところを登ってくる。
思わず腹の奥に力がこもってしまって、長太郎を締め付けてしまう。
耳元に吐息がかかる。長太郎が笑っている。
「しょうがねぇだろ」
「なにも言ってないですよ」
「言わなくてもわかんだよ」
長太郎は俺のものを手のひらで覆って、上下に動かし始めた。
眠気の残っていたはずの体が、強い刺激で無理矢理揺り起こされる気分。
気持ちよさが一瞬のうちに伝播して、腹の中がどんどん良くなっていく。
体温が上がって、長太郎の肌に触れているところが汗ばんでくる。
意図せず逃げ腰になる体を、長太郎は離してくれない。
長太郎が腰を揺らし、腹の中からも刺激される。
抑えられなくなる声を指を噛んで耐えようとしたけれど、手の動きを速められたらどうすることも出来なかった。
「声、我慢しなくていいのに」
「ん、ふっ」
「気持ちよくなってる宍戸さんが好き」
「っ、く」
「宍戸さんのなかもどんどん気持ちよくなってきた。好き。ねぇ、宍戸さん、好き」
耳元から甘やかすような言葉を吹き込まれ続けると、腰が砕けそうになってくる。
ただでさえゆうべの余韻で体の芯がぐずぐずなままだというのに、さらに追い打ちをかけられては抗えない。
「もっと、ちゃんと」
「強くする?」
「ん」
体を転がされて、繋がったままうつ伏せになる。
そのまま長太郎は腰を動かした。
体とシーツに挟まれた性器が押しつぶされて擦れる。
漏れ出たぬめりで先端が敏感に反応している。
前と後ろからの強い刺激はすぐに俺を昂らせた。
「や、ば、」
「強すぎた? 出したくなっちゃった?」
「むり、かも」
「あとで洗えばいいよ」
「ん……っ、あ、あぁ」
長太郎が勢いをつけて腰を押し付けてくる。
肌のぶつかる音は止まない。
奥の方を突かれるたびに先端が擦れて、もうどちらの刺激が引き金になるのかわからないほど、頭のなかがぐるぐるした。
「んうぅっ、ぐっ」
喉の奥から潰れた声が出た。
シーツと下腹の間に広がる体液の熱さを感じて射精したことがわかったけれど、腹の奥を突かれ続けて、絶頂感と内側の快感を長太郎にない交ぜにされた。
長太郎が動くたびに喉の奥から出てしまう声を抑えられない。
下半身のどこからもぐちゃぐちゃとした水音を発して、内から外から気持ちよくされて、またどんどんたまらなくなっていく。
「なか、きそ、う」
「うん。すごくきつくなってる」
「あ、はぁっ」
「俺も、もうだめ、かも」
長太郎が背中に覆い被さってくる。
重みに体全部を押しつぶされて、身動きが取れなくなったまま、今度は腹のなかで達した。
長太郎のものを締め付けた瞬間耳元で呻く声がして、じんわりとした熱さが中に広がった。
身震いするほどの気持ちよさに、涙がでた。
「もうちょっと、こうしてていい?」
「重い」
「ちょっとだけ」
長太郎は少しのあいだ俺にひっついたままじっとしていた。
気が済んだころ、長太郎の体が離れていく。
抜け出ていく感覚と、中から漏れ出る感覚。
「きれいにしますね」
そう言って、長太郎の指が入ってくる。
精液を掻き出す動きは、長太郎にその気がなくても俺のいいところに触れてしまう。
長太郎もそれをわかっていた。
「一回じゃ、足りないですよね」
仰向けになった俺のなかを掻き混ぜながら、長太郎は精液まみれの俺の性器を咥えた。
長太郎の口の中でどんどん硬くなっていくのがわかる。
熱い舌にあちこち舐められながら前立腺を押し込まれて、またすぐに出してしまいそうになる。
「宍戸さん、出したいでしょ」
長太郎は先端に唇をつけて言った。
「どっちもされたら無理だって」
「無理になるようにしてるって言ったら、怒ります?」
「わかってんだよ。わざとそうしてるって」
「ですよね」
長太郎が俺の両足を開いて、なかに入ってくる。
淀みなく一番奥まで届くと、俺の体は素直に反応して長太郎を締め付ける。
「それ、好き。ずっとそうしてて」
長太郎は目を細めて腰を振り始めた。
言われた通りに腹の下に力をこめて長太郎をきつく締め付ける。
そうすると、長太郎の形がより一層はっきりと感じ取れて、俺の感覚まで鋭くなっていく。
長太郎は角度を変えて腰を振った。
いいところを抉るような動きを繰り返されると、いとも容易く体が昂りだす。
「ここだよね?」
「あ、うん、そこ、すげぇ、いい」
「宍戸さんの体もね、すごくいいですよ」
「そのまま、あっ、そこ、それ、やばい」
「イけそう?」
長太郎が俺の性器を見下ろす。
堅かったものは柔らかくくったりとしていて、射精しそうにはない。
「ん、なかの方」
「そっか」
長太郎は強さを変えずにもったいつけるように腰を動かした。
ねっとりとした動きで亀頭を腸壁に押し付けてくる。
いいところをしつこいくらいに撫でまわされる感覚に責め立てられるようにして、俺の腹のなかはひどく締まった。
それが絶頂だった。
「っ、っっ!」
気持ちよすぎて、声も出ない。
触覚以外のすべての感覚がぼんやりとして、長太郎に触れられているところだけがはっきりと輪郭をもつ。
目の前が真っ白で、耳もよく聞こえない気がする。
それでも長太郎は、俺が深い快感の中にいる間も動きを止めなかった。
「宍戸さん、置いてかないでよ」
唇を噛まれて、キスしているのだと気が付いた。
俺に覆い被さって腰を振る長太郎を抱きしめる。
捩じ込まれた舌にやっとの思いで吸い付けば、長太郎は満足そうに俺を抱きしめた。
「んー……いい?」
そう聞いてくる長太郎の瞳を見つめたままキスを返すと、長太郎は俺の肩に顔をうずめて最後まで上り詰めていった。
腹の中に覚えのある熱さが広がる。
それにすら腰が震えて可笑しかった。
「すっかり癖になっちまった」
息も絶え絶えに苦笑いする。
長太郎はときどき小さく腰を揺らして俺の頬やら唇やらに口づけてきた。
「好き」
長太郎が嬉しそうに呟く。
「宍戸さんは?」
「ん?」
「俺のこと、好き?」
「んー」
ほっぺたを両手で包んで口づけてやったら、長太郎はだらしなく笑った。